土壌汚染対策法に基づく指定支援法人
土は、水や空気と同じように、人や生物が生きていく上で重要な基盤です。
土は、粒の大きさにより粘土、シルト、砂、礫に分けられ、粘土やシルトは粒が小さく水を通しにくく、砂や礫は粒が大きく水を通しやすい性質を持っています。
地中では、このような性質の違う土が層になり、地層を形成しています。
地層のなかで砂や礫の層には、地下水が蓄えられています(帯水層)。
地下水は、雨が土壌を通過して形成され、帯水層中をゆっくりと流れています。
土壌が有害物質で汚染されると、有害物質の性質によっては地下水も汚染されることがあります。
土壌や地下水の汚染は、さまざまな経路で人の健康や生活環境に影響を与えるおそれがあります。
土壌汚染は人為的原因と自然由来による汚染があります。
有害物質の中で、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレンなどの揮発性有機化合物は地下深くまで浸透しやすく、地下水に溶け出して汚染が広がることがあります。
鉛、砒素、六価クロム、水銀、カドミウムなどの重金属類は土の中であまり拡散しないでとどまる傾向にあります。
有害な物質は、水・大気中と比べ土の中では移動しにくいため、土の中に長い間とどまりやすく、いったん汚染されると汚染が長い間続き、人の健康や生態系に影響を及ぼします。
工場などの操業に伴い、原料等として用いる有害物質を含む液体を地下に浸み込ませてしまったり、有害物質を含む固体を不適切に取り扱ってしまったりすることなどにより、土壌が有害物質によって汚染された状態。
自然状態の地層にもともと含まれている砒素、鉛、ふっ素等を多く含むことによる土壌汚染のことをいい、地質的に同質な状態で広く存在しているのが特徴。
土壌汚染のメカニズム
土壌汚染が最初に大きな社会問題となったのは農用地の汚染でした。農作物の汚染や生育阻害の防止を目的に1970年に「農用地の土壌の汚染防止等に関する法律」が制定されました。
一方で市街地では工場跡地などの土壌汚染が明らかになり、2002年に「土壌汚染対策法」が制定されました。
そのほかダイオキシン類による環境汚染の防止や除去を図る「ダイオキシン類対策特別措置法」や油臭・油膜により生活環境保全上の支障が生じる油汚染問題に対する「油汚染対策ガイドライン」があります。
人の健康や生活環境、生態系へ悪い影響を及ぼすおそれ(可能性)のことを"環境リスク"といいます。きちんと環境リスクに応じた対策をとればリスクを低くしたり、回避することができます。そのため、環境リスクの考え方を理解することも大切です。
土壌汚染の環境リスクの大きさは、土が有害な物質で汚染された有害性の程度(土の有害性の程度)と、土壌汚染の原因となっている有害な物質を体内に取り込む量(ばく露量)とで決まります。
ばく露とは、汚染された土が手にくっついて、知らず知らずに土を口に入れてしまったり、汚染された土が飛び散って口に入ってしまったり、汚染された土から有害な物質が溶け出した地下水を飲んだりして体内にとりいれることをいいます。
環境リスクの大きさは次のようになります。
土壌汚染による環境リスク = 土の有害性の程度 X ばく露量
そのため、汚染されている土に触れることがないとか、汚染された土から有害物質が地下水に溶け出さなかったり、たとえ溶け出しても、汚染された地下水を飲んでいない場合、すなわち、ばく露がない(ばく露量がゼロ)と考えられる場合には、土壌汚染による環境リスクは問題にならなくなります。
また基準以下に浄化された土であれば、有害性は低いため、ばく露があったとしても環境リスクは許容されるレベルになります。
市街地の土壌汚染の環境リスクは、土壌に含まれる有害物質を口や肌からを直接摂取することによるリスクと土壌に含まれる有害物質が地下水に溶け出して汚染された地下水を飲んで口にすることによるリスクがあり、リスクに応じた対策が必要です。
直接摂取については、汚染された土壌に盛土をしたり、下のきれいな土と入れ替えることによりばく露を防ぐことができます。
地下水の摂取については、汚染された土壌を遮水壁で封じ込めて地下水の汚染拡散を防止すること、地下水の汚染状況をモニタリングして汚染レベルが上がらないことを確認することなどでばく露を防ぐことができます。
また、必要に応じて土壌の汚染を除去すること(汚染土壌をその場で浄化したり、掘削除去して処理施設で無害化することなど)が行われます。
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